黒い翼の少年

ACT.30

ヒトを、愛したのは初めてだった。
必死で愛したその人は、彼に対してこういった。
『リト、リトだけよ。私を信じて付いてきてくれるの。』
そして
『あなたは双翼族のニンゲンじゃないってこと、最初から知ってたのよ。私の前に前日神が下りてきてくださったの。神は言ったわ。私の分身が貴女を助けに参上します。って。その綺麗な白銀の髪と瞳、そして漆黒の羽。すぐ分かったわ。』
愛してはいけないことも知っていたけど、愛してしまった。
彼女はそう言って笑った。
彼も、笑った。
神は神代である存在を罰し、自らを罰した。
神族は、滅亡してしまった。

**
「リト・・・リト、待って、置いていかないで!」
双翼の里が襲撃を受けたそのとき、リト=ガーゴイル基、リト=カイロスト=オスカーの姿はなかった。
居なくなってしまった。
愛してしまったから。
黒煙に包まれたあの白銀の髪は、自分の届かないところに行ってしまった。
「リト・・・嫌・・・嫌だ・・・行かないで・・・」
ルチアは囚われた。
磔にされた。
処刑、された。リトの記憶を持ったヒトは一部始終を見ていた。
リトはこのとき、神代だった。
神は神代に乗り移って、ルチアと神代の子どもを受け取った。
そして、世界で残酷なシナリオを子供たちに託した。
『世界は、残酷で理不尽だ。だから君たちが必要なのだよ。』
悪魔が生まれた瞬間だった。

『この子供たちは世界そのもの。たくさんの矛盾を抱えている。彼等が死ぬとき、私の作った世界は終わるのです。』

神は消えた。
神代は記憶を一切失った。
黒い翼も消えた。
神代はヒトになった。

神はこうも言った。
『いつか、ルチア=ローウェイの生まれ変わりが、真に世界を造ってくれる。』

***
「僕は、僕自身の手で、僕の造った世界を消さなくてはなりません。」
カイロは、変わり果てた悪魔に向けて銃口を向けた。
彼が隠し持っていた武器、拳銃だ。
「そんなもので、俺が死ぬとでも思ってるのか!俺は不死身だ。神の命を持ったのだから・・・」
「神なんかいない!お前はただ神の代身を受けた青年と双翼族の間の子供ってだけだろ!」
カイロの怒鳴り声をジャムは初めて聞いた。
その声音は、子どもを叱る親そのものだった。
「僕は、人間・カイロ=サイカとして、反逆者・バレッド=オスカー最高司令官を討ちます。」
『ドンッ』
「ぐわぁ・・・」
玉が変形した肉体に食い込む。
その玉は奥深く肉体を突き、それはそのまま貫いた。
心臓に風穴が開いた。
大量の血が血管から溢れて、バレッド=オスカーは絶命した。

倒れたバレッドから闇の靄が消え去り、代わりに光の靄がかかる。
すると、ヒラー=ヴィラド=オスカーにも同様の光の靄が掛かった。
「ヒラー・・・」
ジャムがヒラーに近寄る。
「ジャム様・・・私は、あなた様に救われました。私は、あなた様の友となれただけで、幸せでございました・・・」
『パチン』という音で、光の靄に包まれた2人は消えた。




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