黒い翼の少年

ACT.31

サウザリアンに有名な占い師がいる。
黒い翼を持っているが右片方が?がれてなくなっており、右目も潰されて眼帯を当てている。
一見奇妙なその占い師は、『黒い翼の少年』として、サウザリアンの無人島に観光に来たモノ達の運勢を百発百中で当てている。

「俺の、今後を占ってもらおうか。」
「はい。では名前を教えてください。」
「アグリヴォルト。」
「アギィさん、あなたの今後の運勢ですが、お宝ハンター業はうまく行っていないみたいですね。早々に職を変えることをオススメしますよ。妹さんのバーにでも勤めてみたらいかがですか?・・くくっ」
語尾に思わず笑いが入ってしまった。
「うるせー!お宝ハンターじゃない、ジャーナリストだっ!」
アギィは、ジャムの目の前のカウンターをひっくり返した。
「だって、モン婆さんから聞いたよ。アギィはジャーナリストに向いてないって。ひみつ全部暴露しちゃうジャーナリストが何処にいるんだよ。」
ジャムはカウンターを元に戻して、言う。

ウエストランドルの中の大都市、グランド・クレス。
そこに頼まれた依頼を何でも暴露してしまうどうしようもないジャーナリストの卵がいる。
赤黒い髪に紫の瞳を持った彼は、耳の先が尖っていて、いつぞやか姿を消した魔族の生き残りだった。
ジャーナリストを尊敬し、お世話になったジャーナリストの元で修行を積んでいるが、なかなか身にならない様子。

「じゃあ、僕がジャーナリストの卵に依頼でもしてあげようか?」
「カイロ。久しぶり。」
「ムショ帰りがえらそうに。」
「そのムショ帰りが人間種族のトップ・首領の右腕になれたのはジャム君と役立たずなジャーナリストのおかげだからね。」

世界の中心・アースキャニオンのミドル=キャスト。
人間の種族中心のこの地で、世界の大犯罪者と異名を取ってしまった最高司令官バレッド=オスカーの悪事を裁き、一躍世界のトップに躍り出た若者がいる。
灰色の髪に、灰色の瞳を持つその若者は、軍隊を縮小させ、人間以外の少なくなってしまった異種族の保護に尽力している。

「役立たずは余計なんだよ!」
「それよりジャム君、双翼族の里だけど、復興が叶いそうだよ。」
「え?」
「世界を探したら、双翼族出身のヒトって結構いてね、里がルチアを見捨てたあと、ルチアの侍女たちが世界中に散ってったんだ。その侍女たちの子孫が今まだこの世に存在してるって。」
カイロの報告にジャムは胸を撫で下ろした。
「そんなんだぁ・・・」
「ジャムのこと話したら、むこうも結構安心した様子だったよ。」
「バレッドも、もしキルト=バーレンの存在がなかったら双翼族には手を出すつもりはなかったのかもな・・・」
「・・・うん・・・」
「ジャム君?」
「・・・ウン・・・里を・・・復興させるのよそうと思うんだ。」
「世界を一つにするのに、集落は邪魔だってこと?」
「・・・うん・・・」
ジャムはカイロの言葉に小さく頷いた。
「カイロたちと色んな島とか渡ってさ、僕はどんなに小さい世界を生きてたか痛感したんだ。同時に、人間は集落を作ることなく、世界各国何処にでもいて、人間が世界を一つにできたのも、そういう集落とか部落とか作らなかったから大きくなれたんじゃないな・・・って思ったりして。」
カイロは笑顔でうなずく。
「まぁ、そりゃそうだな。」
アギィも不服そうな表情を見せるも頷いた。
「僕は双翼族として、この島で占いをしていくことで生きていく。カイロが会った双翼族の人たちにも、双翼族であることを誇りに思ってそれぞれの地で生きてください。って伝えといて。」
「わかったよ。」
カイロはそういうと、「時間だから」と言ってジャムの占いの館を後にした。
「俺も行くかな。」
アギィも大きなあくびをしながら「じゃあな」と手を振った。

「じゃあね。」
ジャムはそう言って、部屋の窓から海を見た。

広い世界を造った神様は、それぞれに世界を託した。
世界は一つじゃないんだ。
その世界の中心に居るのは、この世界に存在するヒト一人ひとりで、みんながみんな、それぞれ世界を造っているんだ。
誰かの世界を押し付けられれば反発が生まれるし、争いも起きる。
今でも、どこかで争いがあるけれど、それはそれで仕方がないのだろう。
神様は、きっと知っていたのだ。
世界は神のものではない。
世界を作り出し、万物を生み出したのは神様かもしれないけど、どう生きるか、どう死ぬのかは、自分の世界の中のことで、全ては自分次第なのだと・・・

それがうまく出来なかった姿がバレッドであり、キルトなのかもしれない。
世界を憎んで憎んで死んでいった彼等を、忘れるのは簡単だけど、彼等が作り出した世界もまた、世界だ。

「黒い翼の少年、教えてください。」
客がジャムを呼ぶ。

教えてください・・・
神様は、どうして僕たちをこの世にもたらしたのですか?




Fin.
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